はじめに
YouTubeでおすすめに流れてきた桑田佳祐の『明日晴れるかな』を聴いて改めて歌詞の素晴らしさを感じて、この熱力のまま記事を書くことにした。
この記事は、特に難しいライフステージの判断をさせられるアラサーに向けて伝えていきたい。
『明日晴れるかな』の概要
この曲は平成初期の月9ドラマ『プロポーズ大作戦』の主題歌で、山Pと長澤まさみの関係性を引き立てるような役割を果たしている。一方で、ドラマのストーリーとは異なり歌詞の内容は現実世界にいる私たちに向けて、やり直しができずセーブできない人生を後悔のないように歩んで欲しいというメッセージを投げかけている。
(補足すると、『プロポーズ大作戦』は過去に戻って山Pが長澤まさみと結ばれるように奮闘する物語)
メロディーの完成度
音楽的にみると、『明日晴れるかな』はメロディーの作り方が音楽理論に則っていて、キャッチーなフレーズの反復や強弱の置き方が完璧に計算されている。大前提として、メロディーが最高な作り方をされていることを踏まえて、以降は歌詞の素晴らしさに触れていきたい。
1番
熱い涙や恋の叫びも
輝ける日はどこへ消えたの?
明日(あす)もあてなき道を彷徨うなら
これ以上元には戻れない
この歌い出しはまさに社会人のあるあるではないだろうか。時間だけは無限にある学生の頃に、時間を忘れて熱中したこと、大好きな人からの連絡を待ち続けたこと、失恋をして号泣したあの日のこと。社会人になるにしたがって、そうした日々に疎遠になってしまい、毎日変わらない日常を送る。明日も今日の繰り返し。もう学生の頃に戻ることはできない。以前のような輝かしい日を取り戻したいが、時間がなかったりきっかけがなかったり。そして気力体力が少しずつ奪われて灰色の毎日を送る日々。
耳を澄ませば心の声は
僕に何を語り掛けるだろう?
今は汚れた街の片隅にいて
あの頃の空を想うたびに
心の中では本当は何をしたいのか。どのような理想の生活があるのか。本当は理想があるはずなのに、耳を澄まさないとそれが聴こえないくらい存在感が薄くなってしまっている。日々の忙しさが聴こえなくしている。そして、新卒が頑張って借りれるくらいのワンルーム・立地の暮らしの中で嘆いていることを想像させられる。
(執筆時点では私は川崎住みのため、"汚れた街の片隅にいて"の部分は余計に共感ポイントが高い)
神より賜えし孤独やトラブル
泣きたい時は泣きなよ
これが運命(さだめ)でしょうか?
あきらめようか?
季節は巡る魔法のように
社会人生活を送る上で避けては通れない孤独感であったり、仕事でミスをして詰められたり。そういった時に、泣きたい時は泣けと湘南の海のように広い心で語りかける桑田佳祐。ここで一気に涙腺が緩み、何かの許しを得られるような緊張感の緩急。こんなに辛いことはどうにか避けられないのか。頑張ることを辞めてしまうのか。しかし、こうした辛いことは一定の周期でやって来る。それは仕事上の何かのイベントであったり、または四季の温度や湿度の変化、それから体内のリズムによって気分は浮き沈みする。
Oh, baby. No, mabye.
「愛」失くして「情」も無い?
嘆くようなフリ
世の中のせいにするだけOh, baby. You're maybe.
「哀」無くして「楽」は無い
幸せのFeeling
抱きしめて One more time.
そんな生活を送っていれば、愛も情も自然と無縁になっていく。表面的にはそれを嫌だと思うが、耳を澄まさないと聴こえないくらいに小さくなってしまった自分の本音では、あまりにも弱々しく原動力にはなり得ない。結果、責任の所在を外側に求めてしまう。そして、愛情が無ければ哀も楽も生まれない。そんな状況で本当に良いのだろうか?もう一度心の声に従って行動してみないか?
2番
在りし日の己れを愛するために
想い出は美しくあるのさ
遠い過去よりまだ見ぬ人生は
夢ひとつ叶えるためにある
この部分の歌詞が本当に素晴らしく、過去を美化するだけでなく、今頑張ったことが将来的に振り返ってみると良い思い出にもなるという未来志向でもあることが芸術的。過去の思い出を振り返って自分を慰めることができるくらい思い出は美しいものなので、それをあともう一つ作ってみないか、という問いかけも同時に投げかけている。さらにこれから生まれる未来の期待感も匂わせていて、もう少し頑張りたいという気持ちにさせられる。この2番頭の歌い出しは邦楽バラードの歌詞表現の美しさランキング第1位(当社比)になっている。
(歌詞の話とは少し離れるが、個人的にバラードは2番のAメロがとても好きで、ドラム隊がAメロに加わることで勢いが出たり、歌詞のメッセージ性が強調されるパートであることから、心情がグッと揺さぶられる)
奇跡のドアを開けるのは誰?
微笑よ もう一度だけ
君は気付くでしょう?
その鍵はもう
きみの手のひらの上に
未来を変えられるのは自分しかいない。世の中のせいにしてはいけない。微かに聴こえる心の声にしたがって、今はもう一踏ん張りしてみないか?その頑張りが必ず達成できるかどうかは分からないし、ハードルは高くて感じるかもしれない。それでももう一度奇跡を起こして、耀く思い出を作れるのは自分のしかいない。
(歌詞を丁寧に読み解いてみると、1番より2番の歌詞の方がドラマの主題歌としてマッチしているのはご愛嬌)
why baby? Oh, tell me.
「愛」失くして「憎」も無い?
見て見ないようなフリ
その身を守るため?Oh, baby. You're maybe.
もう少しの勝負じゃない!!
くじけそうな Feeling
乗り越えて One more chance.
奇跡を起こすため、もう一つ思い出を作るために行動に移したが諦めそうになったとき、そんなときは桑田佳祐が背中を押してくれる。愛と情を取り戻せば哀と楽もやって来る。愛と憎も生まれてくる。上手くいかないときもあるけどせめてあともう一歩。せっかくここまで孤独やトラブルを乗り越えてきたからこの先もきっと上手くいくはず。
I talk to myself…
Oh, baby. No, mabye.
「愛」失くして「情」も無い?
嘆くようなフリ
残るのは後悔だけ!!Oh, baby. Smile baby.
その生命(いのち)は永遠(とわ)じゃない
誰もがひとりひとり胸の中で
そっと囁いているよ「明日(あした)晴れるかな…」
遥か空の下
なにも行動に移さなければ後悔しか残らない。人生は短いもので、まさに「いのち短し恋せよ乙女」。少し先の未来に希望を持つことから始めれば良い。明日の天気が晴れれば気分が上がるし、傘を持たずに仕事に行ける。今は汚れた街にいるかもしれないけど、あの頃の空をもう一度取り戻すために。
以上、勢いに身を任せて感じたままに書いてみました。
アラサーの人生が少しでも豊かになることを祈って。