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Indigo la End『夜漁り』の歌詞に川谷絵音の表現力を感じさせられた

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川谷絵音がフロントマンであるバンドIndigo la Endの『夜漁り』の歌詞が素晴らしかったため、ここに書き残しておく

 

こんな歌詞を書ける川谷絵音は、現在進行形で浮気不倫二股三股をしていないかと疑ってしまうほど

 

歌詞だけでなくMVの世界観もエモーショナルで、より一層楽曲に没頭させられる

 

以下、歌詞の解説と感銘を受けた表現をピックアップしていく

 

Indigo la End - 夜漁り

夜漁り

夜漁り

indigo la End「夜漁り」 - YouTube

 

Aメロ

グッバイ
もう戻れないからグッバイ
灯る場所には
グッバイ
たおやかな火
君のことだよ

Aメロの中で、「たおやかな火=灯る場所=君」という関係を明示している

そんな場所にはもう戻れないという

 

"火"というのは温かく時に熱く、そういったものをもたらしてくれる存在

『夜漁り』というタイトルに含まれている"夜"とAメロで出てくる"火"というのは色彩として捉えると1つのアクセントの関係にある

"火"を温度感として感じられれば感じられるほど、"夜"というのはその対比として冷たいイメージが強くなっていく

それと同時に、"火"が灯ってもそれを"火"として認識できるくらいに"夜"は光り輝いていない様子も想像できる

しかし、灯る場所と認識しているにも関わらず、そんな場所にはもう戻れないと思っている

 

さらに想像を膨らませると、"夜"の中で"火"が灯るとすると煙草をイメージすることができて、君という存在は煙草を吸って満たされない何かを埋めようとしている心情を持っていることも想像できる

 

ラブサマちゃんやコレサワも煙草についての曲を出しているように、邦楽ロックと煙草は切っても切り離せない関係

 

Bメロ

午前2時恋しくなる
過去だけは認めたまま
ああ、軽いキスも重いキスもしたけど
言ったそばから
君とはもう

川谷絵音は午前2時に誰のことを思い出すのだろうか

 

Bメロでは、恋しくなって過去を思い出す様子が描かれている

君という存在に恋しい感情が結び付いているが、"もう戻れない"ので、その感情は続いていく

 

Bメロの、"言ったそばから"というこの表現が素晴らしく、具体的に何を言ったのかを明らかにしないことで、作品の世界観に余白が生まれる

何を言ったのかは分からないが、その場の流れで無責任に軽い言葉を投げかけたことが読み取れる

 

サビで書かれていることを先取りすると、この時点ですでに燃えきったことが分かる

 

サビ

会えない
もう会えない
夜を漁るあいにくの御心で
燃えない
もう超えない
恋はそこに寂しく転がってる

もう会えない、なぜならもうこれ以上燃えないから

 

サビにも光る表現があり、それは"夜を漁るあいにくの御心で"と"恋はそこに寂しく転がってる"

 

もう燃えなくて会えないから次の"夜"を漁りに行く

この恋しさは別の燃える火に埋め合わせてもらう

 

夜漁りというワードは男漁り、女漁りと対応していて、夜と男女をさりげなく結び付けているところが川谷絵音の上手いところ

 

"恋はそこに寂しく転がってる"は、もう用済みとなって燃えきってしまった君を指している

"そこに"、"寂しく"、"転がってる"というある意味他人事のような、やや冷たい言い方がもう君に魅力を感じていないことを強調している

 

Aメロ

さすらうのは
予備の心
本当はもう
此処にあらず

ストックとしてキープするか迷うが、その迷いをすぐに捨てられるほど君は燃えるような存在ではない

 

Bメロ

あまりにも切ないけど
君とはもう

ここはAメロとサビの繋ぎ

切ないと思うくらいには名残惜しいと思っているが、サビでもう会えないと繰り返される

 

サビ

会えない
もう会えない
夜を漁るあいにくの御心で
燃えない
もう超えない
恋はそこに寂しく転がっては
癒えないし
飾れない
電話したら夜が曲がるだけだし
そんな二人はもう
はなればなれ
このまま時は過ぎる

"会えない"〜"転がっては"までは1番サビと同じ

 

"癒えないし飾れない"

この表現も会えない理由を強調している

 

"電話したら夜が曲がるだけだし"

ここで情に負けたら運命が変わってしまう

 

サビ

止まない
夜の餌
君はどこで悲しみに耽るのか
会えない
もう燃えない
寂しそうな転がり方見てると

恋はきっとわがままだし
夜の底は途方もない
グッバイ グッバイ
会えぬ人よ

流体みたいだ 

曲の終わりに向けて畳み掛けるように展開していくパート

 

"止まない 夜の餌"

次の相手を得るために餌を撒いているのか、それとも餌を与えられる側にいるのか

それが止まないほど沢山の夜の餌がある

 

そんな余裕のある状態にいるからこそ"君はどこで悲しみに耽るのか"と言っているかのようだ

 

"夜の底は途方もない"

ここでもう一度タイトルに絡んだ表現が出てくる

もう燃えないからまた夜を漁る欲深さ

そして撒いた餌が次第に底に溜まっていく

この一節は満たされない欲の深さを表しているように思える

 

"流体みたいだ"

流体を気体として捉えると、"火"を燃え上がらせるための気体が連想される

一方で、流体を液体として捉えると、底が底として成り立つために液体という存在が不可欠となる

 

次々流されていく、場所を点々とする、欲を満たすために止まることなく動き回るような、そういったイメージが湧いてくる

 

これもタイトルの夜漁りの意味をさらに強調している

 

 

以上が歌詞の解説と、素晴らしいと感じた表現のまとめになる

 

ネットで『夜漁り』を検索しても歌詞を解説しているサイトがほとんどヒットしなかったため、それが今回歌詞解説を書くきっかけとなった

 

歌詞とMVとの相乗効果で素晴らしい作品に仕上がっているので必ず観てほしい

そして、キャストの弓ライカさんの所作にも引き寄せられる

個人的には、MV終盤の間奏で下唇を噛むところに色々な感情が込められているように思えて、非常にエモさを感じる好きな場面